尊厳死宣言書(リビングウィル)とは?書き方と家族への伝え方
尊厳死宣言書は、回復の見込みがないときに延命治療を望むかどうかの意思を記す文書です。法的強制力はありませんが、公正証書として作成し、家族とかかりつけ医に共有・保管しておくことで、本人の意思が医療現場で尊重されやすくなります。
「延命治療を望むかどうか」は、本人にしか決められない大切な意思です。しかし、実際にその場面に立ち会うのは家族であり、判断を委ねられた家族が「本人はどう考えていたのだろう」と悩むケースは少なくありません。尊厳死宣言書は、そうした場面で本人の意思を伝えるための手段のひとつです。
1. 尊厳死宣言書とは・エンディングノートとの違い
尊厳死宣言書(リビングウィルとも呼ばれます)は、治る見込みがない末期状態になったときに、単なる延命のための治療を差し控えてほしいという本人の意思を、あらかじめ文書にまとめておくものです。
- 対象が明確 — 主に終末期医療における延命治療の希望・不希望に焦点を絞った文書です。
- 単独の文書として作成することが多い — エンディングノートの一部に記載することもできますが、医療現場に提示する場面を想定し、単独の書面として整えておくと伝わりやすくなります。
一方、エンディングノートは、資産・連絡先・葬儀の希望など、暮らし全般の情報を幅広く書き残すものです。尊厳死宣言書は、そのなかの「医療・延命に関する意思」を、より明確な形で切り出したものと考えると分かりやすいでしょう。両方を作成し、エンディングノートから「尊厳死宣言書は別紙にあります」と参照できるようにしておくと、家族が迷いません。
2. 法的効力の限界と医療現場での扱われ方
まず押さえておきたいのは、日本には尊厳死宣言書の効力を直接定める法律が存在しないという点です。宣言書があるからといって、延命治療の中止・不開始が自動的に法的義務になるわけではありません。
- 医療機関は、本人の意思を尊重しつつも、その時点の医学的判断や家族の意向も踏まえて対応を検討します。
- 宣言書は、本人がどのような意思を持っていたかを示す重要な資料として扱われます。意思確認の手がかりが何もない場合に比べ、本人の考えが伝わりやすくなります。
- 医療機関や医師によって、宣言書の受け止め方や運用は異なります。かかりつけ医がいる場合は、事前に宣言書の存在と内容を伝え、対応方針を確認しておくと安心です。
3. 公正証書として作成する方法とメリット
尊厳死宣言書は自筆でも作成できますが、公証役場で公正証書として作成する方法が広く用いられています。
- 作成の流れ — 最寄りの公証役場に相談し、宣言したい内容を伝えます。公証人が文案を作成し、本人が公証役場に出向いて内容を確認・署名する形が一般的です。手数料は公証役場によって案内されます。
- メリット①:証明力が高まる — 公証人という第三者が本人確認と意思確認を行うため、「本人が自らの意思で作成した」ことの証明力が高くなります。
- メリット②:原本が公証役場に保管される — 手元の書類を紛失しても、公証役場に原本の記録が残ります。
- メリット③:家族間の争いを防ぎやすい — 「本当に本人の意思だったのか」という疑義が生じにくく、家族が意思決定の場で拠り所にしやすくなります。
費用や具体的な手続きは公証役場や地域によって異なるため、事前に電話などで確認しておくとスムーズです。
4. 家族・かかりつけ医への共有と保管の仕方
尊厳死宣言書は、作っただけでは意味がありません。いざというとき、その存在を知っている人がいなければ、意思は伝わらないままになってしまいます。
- 同居家族・キーパーソンに伝える — 作成した事実と保管場所を、判断を任せることになりそうな家族に共有しておきます。
- かかりつけ医に伝える — 通院先の医師に宣言書のコピーを渡しておく、または存在を伝えておくと、実際の場面で参照されやすくなります。
- すぐに取り出せる場所に保管する — 公正証書の正本・謄本は、自宅の分かりやすい場所や、家族が把握している保管場所に置いておきます。
- 複数の家族に同じ情報を伝える — 1人だけが知っている状態だと、その人が不在のときに意思が伝わりません。
あわせて、親と“もしも”の話をしておくことも大切です。文書だけでなく、日頃の会話のなかで本人の考えを聞いておくと、家族も判断のときに落ち着いて向き合えます。
5. ACP(人生会議)との関係と併用の進め方
近年、医療・介護の現場ではACP(アドバンス・ケア・プランニング、通称「人生会議」)という考え方が広まっています。ACPは、本人・家族・医療者が繰り返し話し合いながら、将来の医療やケアの方針を一緒に考えていくプロセスです。
- 尊厳死宣言書は「結果を書面にしたもの」、ACPは「そこに至るまでの話し合いのプロセス」という関係にあります。
- 宣言書を作成したあとも、体調や考えの変化に応じて内容を見直すことが望ましいとされています。ACPの考え方に沿って、定期的に家族やかかりつけ医と話す機会を持つと、宣言書の内容が実態から離れずに済みます。
- 宣言書という書面と、ACPという継続的な対話を両輪で進めることが、本人の意思をより確実に伝える助けになります。
「どこにあるか」を家族に伝える仕組みを
ReliefNote は、尊厳死宣言書や公正証書の保管場所、かかりつけ医の連絡先など、いざというとき家族が必要になる情報を1か所にまとめておけます。無料。
ReliefNote を無料で使ってみる6. よくある質問
回復の見込みがない状態になったとき、過剰な延命治療を望まないという本人の意思を記した文書です。元気なうちに自分の言葉でまとめておくことで、判断ができなくなったときに家族や医師に意思を伝える手がかりになります。
日本には尊厳死そのものを直接定める法律がなく、宣言書があれば延命治療の中止が法的に強制されるわけではありません。ただし本人意思を確認する重要な資料として、医療現場の判断材料になります。
必須ではありませんが、公証役場で公正証書として作成すると、本人が自らの意思で作成したことの証明力が高まり、家族間で内容をめぐる争いが起きにくくなります。原本は公証役場にも保管されます。
同居家族や普段連絡を取る親族に加え、かかりつけ医にも伝えておくことが大切です。保管場所が家族に分からなければ、いざというときに存在自体が見過ごされてしまいます。
