遺贈を受けたら何をする?受遺者の手続きと注意点
まず遺言書が「特定遺贈」か「包括遺贈」かを確認します。特定遺贈は放棄がいつでも可能ですが、包括遺贈は原則3か月以内に家庭裁判所へ放棄の申述が必要です。相続人でなくても相続税がかかり、法定相続人以外は2割加算される点にも注意しましょう。
ある日突然「あなたに遺贈する」という遺言書の存在を知らされ、何から手をつけていいか分からない――受遺者(遺贈を受けた人)にはそうした状況がよくあります。相続人であっても、まったくの第三者であっても、遺贈を受けた場合の対応の基本は共通しています。この記事では、確認すべき点と手続きの流れを順に整理します。
1. 特定遺贈と包括遺贈の違い
遺言書の文言を確認すると、遺贈には大きく2つの種類があります。
- 特定遺贈 — 「〇〇の土地を遺贈する」「A銀行の預金を遺贈する」など、特定の財産を指定するタイプです。指定された財産だけを受け取り、原則として故人の借金など負債は引き継ぎません。
- 包括遺贈 — 「財産の3分の1を遺贈する」のように、財産全体に対する割合で指定するタイプです。この場合、包括受遺者は法律上、相続人と同じような立場になり、プラスの財産だけでなく負債も割合に応じて引き継ぐ点が大きな違いです。
2. 遺贈を放棄したい場合の方法と期限
受け取るはずの財産でも、負債が多い、管理が難しい、関わりたくないなどの理由で放棄したいケースがあります。特定遺贈と包括遺贈では、放棄の方法と期限が異なります。
- 特定遺贈の放棄 — 期限の定めはなく、いつでも自由に放棄できます。相続人や遺言執行者に対して、放棄する意思を伝えれば足ります(後のトラブルを避けるため、書面で残しておくと安心です)。
- 包括遺贈の放棄 — 相続人の相続放棄と同様の扱いになるため、自己のために遺贈があったことを知ってから原則3か月以内に、家庭裁判所へ「相続放棄」の申述をする必要があります。期限を過ぎると、原則として放棄できなくなります。
相続放棄の全体的な期限の考え方は相続手続きの期限一覧の記事もあわせてご覧ください。
3. 相続税は相続人以外でもかかる(2割加算に注意)
「相続人ではないから税金は関係ない」と考えがちですが、これは誤解です。
- 遺贈によって財産を取得した人は、相続人であるかどうかに関わらず相続税の課税対象になります。
- 相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)がありますが、これは相続財産全体にかかる控除であり、受遺者が個別に非課税になるわけではありません。
- 財産を取得した人が配偶者・親・子など一親等の血族以外である場合、算出された相続税額が2割加算される仕組みがあります。孫や兄弟姉妹、友人・第三者への遺贈はこの対象になり得ます。
4. 遺言執行者がいる場合・いない場合の流れ
遺贈された財産をどう受け取るかは、遺言執行者の有無で流れが変わります。
- 遺言執行者がいる場合 — 執行者が遺言の内容に従って財産の名義変更や引き渡しの手続きを進めます。受遺者は執行者と連絡を取り、必要書類(本人確認書類など)を提出すれば手続きが進みます。相続人全員の同意を都度取る必要がないため、比較的スムーズです。
- 遺言執行者がいない場合 — 受遺者は相続人全員の協力を得て、財産の引き渡しや名義変更の手続きを進める必要があります。相続人の中に協力が得られない人がいると、手続きが滞ることもあります。その場合は、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てる方法もあります。
5. 不動産を遺贈された場合の登記と遺留分リスク
不動産が遺贈の対象になっている場合、特有の注意点があります。
- 登記手続き — 遺贈による所有権移転登記が必要です。遺言執行者がいればその協力で単独申請できる場合がありますが、いない場合は相続人全員の協力(共同申請)が必要になることがあります。相続登記は2024年4月から義務化されており、不動産の取得を知った日から3年以内に登記をしないと10万円以下の過料の対象になり得ます。遺贈で不動産を取得した場合も対象になるため、早めに手続きを進めましょう。
- 遺留分侵害額請求のリスク — 遺贈によって配偶者・子・親などの遺留分(法律上最低限保障された取り分)が侵害されている場合、その相続人から金銭の支払いを求められる可能性があります。高額な不動産を遺贈された場合は特に、事前に法定相続人の構成や取り分を確認し、請求があった場合の対応を考えておくと安心です。
登記の義務化については相続登記の義務化に関する記事でも詳しく解説しています。
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まず遺言書の文言が「特定の財産を指定した特定遺贈」か「割合を指定した包括遺贈」かを確認します。次に遺言執行者の有無を確認し、いれば執行者と、いなければ相続人全員と連絡を取って引き渡しの手続きを進めます。
特定遺贈はいつでも自由に放棄でき、相続人や遺言執行者への意思表示で足ります。一方、包括遺贈は相続人と同様の扱いになるため、自己のために遺贈があったことを知ってから原則3か月以内に家庭裁判所へ放棄の申述をする必要があります。
かかります。遺贈で財産を取得した人は相続人でなくても相続税の課税対象になります。さらに、配偶者・親・子など一親等の血族以外の人が財産を取得した場合は、相続税額が2割加算される仕組みがあります。
あり得ます。遺贈によって他の相続人の遺留分を侵害している場合、相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。登記手続きを進める前に、遺言の内容と法定相続人の構成を確認しておくと安心です。
