生前の備え

死後事務委任契約とは?おひとりさまの備え

2026年7月17日監修:ReliefNote 創業者 北林 歩読了 約8分
結論

死後事務委任契約とは、葬儀・行政手続き・各種解約などを生前に信頼できる人へ委任しておく契約です。相続(財産の承継)とは別の仕組みで、おひとりさまや身寄りが少ない方が「自分が亡くなった後の実務」を誰かに確実に担ってもらうための備えです。

この記事の内容
  1. 死後事務委任契約とは何か
  2. 何を委任できるか——対象範囲の具体例
  3. 遺言書との違い・組み合わせ方
  4. 誰に頼めるか——委任先の選択肢
  5. 費用と預託金の考え方
  6. 契約までの流れと注意点
  7. よくある質問

「自分が亡くなった後のことを、誰に、どこまで頼めばいいのか」——子どもがいない、あるいは家族が遠方にいるという方にとって、これは切実な問いです。日本では身寄りのない方が増えるなか、死後事務委任契約という仕組みへの関心が高まっています。この記事では、その内容・遺言との違い・委任先・費用まで、具体的に整理します。

1. 死後事務委任契約とは何か

死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後に発生する実務的な手続きを、生前に特定の人(受任者)へ委任しておく契約です。民法上の「委任契約」(民法643条)を根拠とし、本人の死亡後も効力が続くよう特約を設ける形が一般的です。

通常、委任契約は委任者(本人)が死亡すると終了しますが、「死後も効力を存続させる」旨を契約書に明記しておくことで、受任者が死後の事務を適法に行えるようになります。

この契約は財産の承継(誰に何を渡すか)を決める遺言書とは目的が異なります。両者を組み合わせて活用することが一般的です(詳しくは後述)。

2. 何を委任できるか——対象範囲の具体例

死後事務委任契約で委任できる内容は幅広く、本人と受任者が合意した範囲で決めます。代表的な委任事項を挙げます。

財産の分配・相続に関する事項は、死後事務委任契約では定められません。誰に何を相続させるかは、遺言書で別途定める必要があります。

なお、デジタル遺品の整理については、スマートフォンのロック解除も含め、別途準備が必要なケースがあります。あわせて確認しておくと安心です。

3. 遺言書との違い・組み合わせ方

死後事務委任契約と遺言書は、よく混同されますが、カバーする領域がはっきりと異なります。

項目死後事務委任契約遺言書
目的死後の実務手続きの委任財産の承継・相続の指定
効力が生じるタイミング死亡後(特約により継続)死亡後(開封・検認後)
決められること葬儀・行政手続き・解約など誰に何を相続させるか
形式私署証書または公正証書(公正証書推奨)自筆証書・公正証書・秘密証書
法的根拠民法643条(委任)民法960条以下(遺言)

実務上は、死後事務委任契約と遺言書(できれば公正証書遺言)を組み合わせることが一般的です。遺言書で財産承継を、死後事務委任契約で実務手続きをそれぞれカバーすることで、残された方(あるいは受任者)が迷わずに動ける体制を整えられます。

また、遺言書に「遺言執行者」を指定しておくと、相続財産の管理・引き渡しを遺言執行者が担うため、死後事務委任契約との役割分担がより明確になります。遺言書の効力と書き方についても、あわせて確認しておくことをお勧めします。

4. 誰に頼めるか——委任先の選択肢

受任者(委任を受ける人)は、本人が信頼できると判断した人であれば、個人でも法人でも構いません。主な選択肢を整理します。

受任者を選ぶ際は、「自分より長く元気でいられるか」「万が一受任者が先に亡くなった場合の対応」も考えておきましょう。専門家や法人を選ぶ場合も、引き継ぎ体制を確認してください。

5. 費用と預託金の考え方

死後事務委任契約にかかる費用は、大きく分けて次の2つです。

預託金のトラブルに注意。受任者(法人・個人を問わず)が倒産・廃業・死亡した場合、預託金が返還されないリスクがあります。預託先が「信託」や「第三者機関での分別管理」を行っているかどうかを、契約前に必ず確認しましょう。費用総額・返金条件・解約時の扱いも書面で明確にしておくことが重要です。

なお、葬儀費用や埋葬料については制度面での補助がある場合もあります(健康保険の埋葬料は原則5万円など)。葬儀費用と埋葬料の考え方もあわせてご確認ください。

6. 契約までの流れと注意点

死後事務委任契約を結ぶまでの一般的な流れは以下のとおりです。

  1. 委任する内容を整理する — 葬儀の希望(形式・規模・連絡してほしい人のリストなど)、解約が必要な契約の一覧、住まいの状況などをリストアップします。
  2. 受任者の候補を検討する — 個人・専門家・法人など複数の選択肢を比較します。
  3. 複数の専門家・機関に相談・見積もりを依頼する — 費用・サービス内容・預託金の管理方法を比較検討します。
  4. 契約内容を書面で確定する — 公正証書にすることで、後日のトラブルを防ぎやすくなります。受任者の権限範囲・報酬・預託金の扱い・解約条件を明記します。
  5. 関係者に契約の存在を知らせる — 家族・親族・かかりつけ医・入居施設などに「死後事務委任契約を結んでいる」ことと、受任者の連絡先を伝えておきます。
  6. 定期的に見直す — 生活状況・人間関係・希望が変わった際には、契約内容を更新します。
契約書の保管場所と受任者の連絡先を、信頼できる複数の人が把握できるようにしておきましょう。亡くなった後に「契約の存在自体が分からない」という事態を防ぐことが大切です。

「どこに何があるか」を一か所にまとめておく

死後事務委任契約の存在・受任者の連絡先・委任内容、そして口座・保険・各種契約の情報——これらをReliefNoteに記録しておけば、受任者がスムーズに動けます。入院・介護が始まるタイミングでも同じ情報が役立ちます。

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よくある質問

死後の手続きを誰に頼めますか?

信頼できる知人・友人のほか、司法書士・行政書士・弁護士などの専門家、NPO法人などに依頼できます。生前に「死後事務委任契約」を結んでおくことで、葬儀・行政手続き・各種解約などを任せることができます。

死後事務委任契約と遺言書はどう違うのですか?

遺言書は「誰に何を相続させるか(財産の承継)」を定めるものです。一方、死後事務委任契約は「葬儀・行政手続き・各種解約など、財産承継以外の実務的な手続き」を生前に誰かへ委任するものです。目的が異なるため、両方を組み合わせて備えることが一般的です。

死後事務委任契約の費用はどのくらいかかりますか?

契約内容・委任先・地域によって大きく異なります。専門家への報酬のほか、実際の手続きに使う「預託金」を預けるケースもあります。費用や預託金の扱いは事前に複数の専門家や機関に確認し、契約内容を書面で明確にしておくことが大切です。

おひとりさま以外でも死後事務委任契約は必要ですか?

家族がいる場合でも、子が遠方に住んでいる・高齢の配偶者しかいない・家族に負担をかけたくないといった事情があれば、死後事務委任契約を活用する意味があります。家族構成にかかわらず、手続きを担える人が身近にいないと感じる方には有効な備えです。

リリーフノート
北林 歩 ReliefNote 創業者。家族の重要情報マネージャ「ReliefNote」を開発。