相続手続き

相続人が行方不明の時はどうする?「不在者財産管理人」の選任手続きと遺産分割

2026年9月6日監修:ReliefNote 創業者 北林 歩読了 約8分
結論

行方不明の相続人がいると遺産分割協議は成立しません。家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立て、さらに協議参加には「権限外行為許可」を別途得る必要があります。生死が7年以上不明なら「失踪宣告」も選択肢です。

この記事の内容
  1. 行方不明の相続人がいると何が止まるか
  2. 不在者財産管理人の選任手続きの流れ
  3. 申立てに必要な書類と予納金
  4. 権限外行為許可が別途必要な理由
  5. 失踪宣告との違いと使い分け
  6. 元気なうちにできる備え
  7. よくある質問

親が亡くなり、いざ遺産分割協議書を作ろうとしたら、きょうだいの一人と何年も連絡が取れていない——。こうしたケースは珍しくありません。この記事では、行方不明の相続人がいるときに使う「不在者財産管理人」の制度を、手続きの流れに沿って整理します。

1. 行方不明の相続人がいると何が止まるか

遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。一人でも連絡が取れない、住所が分からないという状態のままでは、次のような手続きがすべて止まってしまいます。

「とりあえず他の相続人だけで協議書を作る」という対応はできません。行方不明の相続人を除外した協議書は無効になります。相続税の申告期限(10か月)が近づいている場合でも、まずは正規の手続きを踏む必要があります。

2. 不在者財産管理人の選任手続きの流れ

行方不明者(不在者)の財産を保全し、代わりに手続きを行う人を「不在者財産管理人」と呼びます。選任の流れは次の通りです。

不在者財産管理人は「遺産分割のためだけ」に選ばれる一時的な役職ではありません。選任後は不在者が見つかるか、財産がなくなるまで管理業務が続くのが原則です。

3. 申立てに必要な書類と予納金

申立てに必要な主な書類は次の通りです(家庭裁判所や事案により追加を求められることがあります)。

費用面では、申立ての実費(収入印紙・郵便切手代など)に加えて、管理人の報酬や管理事務にかかる費用に充てるための予納金を納めるよう求められることがあります。予納金の額は、不在者の財産状況や想定される管理期間によって家庭裁判所が個別に判断するため、一律の金額を見込むことはできません。財産が少なく管理の負担が重いと見込まれる場合、申立人側の負担が大きくなることもあります。

4. 権限外行為許可が別途必要な理由

不在者財産管理人の基本的な役割は、あくまで不在者の財産を「現状のまま保存・管理」することです。遺産分割協議に参加して不在者の相続分について合意することは、財産を処分する行為にあたるため、管理人が単独で行うことはできません。

そこで、遺産分割協議に参加させるには、管理人が別途家庭裁判所に「権限外行為許可」の申立てを行い、許可を得る必要があります。家庭裁判所は、不在者の相続分が不当に少なくなっていないかなどを確認したうえで許可の判断をします。つまり、選任と権限外行為許可は別の手続きであり、両方をクリアして初めて遺産分割協議を進められます。

5. 失踪宣告との違いと使い分け

行方不明者に関する制度には、もう一つ「失踪宣告」があります。両者は目的も効果も異なります。

制度前提効果
不在者財産管理人生死不明・所在不明でも生存が前提財産を保存・管理(協議参加には別途許可)
失踪宣告生死不明の状態が原則7年以上続く場合など法律上死亡したものとみなされ、相続が開始する

行方が分からなくなってからの期間が短い場合や、生存している可能性が高い場合は不在者財産管理人を、長期間(目安として7年以上)にわたり生死不明の状態が続いている場合は失踪宣告を検討するのが一般的な流れです。ただし、どちらを選ぶべきかは個別の事情によって異なるため、判断に迷う場合は家庭裁判所や専門家に相談することをおすすめします。

6. 元気なうちにできる備え

不在者財産管理人の手続きは、申立てから選任、権限外行為許可まで一定の時間がかかります。相続放棄の3か月や相続税の10か月といった期限がある中で、これだけの手続きを後から進めるのは大きな負担です。

だからこそ、家族の連絡先や関係性を元気なうちに整理しておくことが有効な備えになります。疎遠になっているきょうだいや親族がいる場合は、せめて連絡が取れる状態を保っておくだけでも、いざという時の手続きの負担は大きく変わります。

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よくある質問

相続人の一人と連絡が取れない場合、遺産分割協議はどう進めますか?

遺産分割協議は相続人全員の合意が必要なため、行方不明の相続人を除いて進めることはできません。家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立て、選ばれた管理人に本人の代わりとして協議に参加してもらいます。

不在者財産管理人の選任には費用がかかりますか?

申立ての実費に加えて、管理人の報酬などに充てるための予納金を家庭裁判所に納める必要があります。金額は不在者の財産状況や管理内容によって裁判所が個別に判断するため、事前に一律の金額を見込むことはできません。

不在者財産管理人が選ばれれば、そのまま遺産分割協議に参加できますか?

いいえ。財産管理人は不在者の財産を保存・管理する役割が基本のため、遺産分割協議のように不在者の権利を処分する行為には、別途家庭裁判所の「権限外行為許可」が必要です。許可を得てはじめて協議に参加できます。

不在者財産管理人と失踪宣告はどう違いますか?

不在者財産管理人は生死不明でも本人が生存している前提で財産を管理する制度です。一方、失踪宣告は生死が7年以上不明な場合などに法律上死亡したものとみなす制度で、相続そのものを開始させる点が異なります。

リリーフノート
北林 歩 ReliefNote 創業者。家族の重要情報マネージャ「ReliefNote」を開発。